消費者金融

消費者金融からの借り入れの返済にも使える年金担保融資

消費者金融からの借り入れの返済にも使える年金担保融資

年金担保融資とは、ご自身の年金を受け取る権利を担保にして公的機関からお金を借り入れる融資制度です。この制度を利用すると、銀行や消費者金融によるカードローンに比べて低い金利で融資を受けることができます。
 

この融資制度は、公的機関からの融資であることに加え、金利が低いこともありメリットが多い制度である一方、返済額が毎月の年金から天引きされることにより生活が逼迫するリスクがあるというデメリットもあります。

 
ここでは、年金担保融資の制度概要や融資が受けられる条件などについてご説明していきます。
 

自分の年金の種類に合わせて申し込もう!

年金担保融資とは、国民年金や厚生年金保険、共済年金などの年金を担保にして、公的機関から融資を受けることができる制度です。

融資をしているのは

  1. 「独立行政法人福祉医療機構(WAM)」
  2. 「株式会社日本政策金融公庫(JFC)」

というふたつの機関です。

法律により、年金担保融資はこのふたつの機関でしか扱うことができないと定められています。これらの機関のうち、ご自身が受給している年金の種類によってどちらの機関でどの種類の融資を受けられるのかが変わってきます。

まず、一般的に広く知られているのが独立行政法人福祉医療機構(WAM)による融資制度です。

(独)福祉医療機構(WAM)で提供しているのは

  1. 「年金担保貸付」
  2. 「労災年金担保貸付」

という2種類の融資事業で、担保にできる年金の種類は「厚生年金、国民年金、船員保険年金、労災年金(老齢年金、老齢基礎年金、障害年金、遺族年金のいずれでも可)」となっています。

なお、厚生年金基金、国民年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金から支払われる年金、老齢福祉年金、特別障害給付金、石綿健康被害救済法に基づく特別遺族年金は対象になりません。民間企業でサラリーマンとして働いていた方などは、こちらの機構(WAM)からの融資を受けることになります。

一方、(株)日本政策金融公庫(JFC)で提供しているのは「恩給・共済年金担保融資」という融資事業

担保にできる年金の種類は「恩給、災害補償年金、共済年金、共済組合が支給する厚生年金」となっています。公務員として働いていた方などは、こちらの機関(JFC)からの融資を受けることになります。

年金担保融資は公的機関が提供する公的融資制度であり、国から確実に支払われる年金を担保にしていることから、低い金利でお金を借り入れることができます。返済が確実に行われるため融資する側も安心して低い金利で貸し出すことができるのです。
 

では、実際の金利をみてみましょう。

各機関が設定している金利は次のとおりです。

・(独)福祉医療機構(WAM):年金担保融資は年1.9%、労災年金担保融資は年1.2%
・(株)日本政策金融公庫(JFC):恩給・災害補償年金担保融資は年0.31%、共済年金・厚生年金担保融資は年1.81%

一方、銀行や消費者金融のカードローンの金利は次のとおりです。
・三井住友銀行カードローン:年4.0〜14.5%
・アコムカードローン:年3.0〜18.0%
・住信SBIネット銀行不動産担保ローン:年2.95〜8.9%(変動金利)

年金担保融資が設定する金利は最高で1.9%や1.81%となっていますが、一方で銀行や消費者金融が設定する最高金利は、銀行のカードローンで最高14.5%、消費者金融のカードローンで最高18%となっており、年金担保融資の方がかなり低い金利になっていることがわかります。

また、SBIネット銀行が提供する不動産を担保にした融資でも最高8.9%の金利が設定されていて、年金担保融資の金利の方が低く設定されています。公的年金の確実性に対する信用がこれだけの金利差に表れているのです。

なお、年金を担保に貸付を行えるのは、法律により(独)福祉医療機構(WAM)と(株)日本政策金融公庫(JFC)に限定されています。これら以外のところ(質屋など)で年金を担保にした貸付を受けることは違法行為になりますので注意してください。
 

福祉医療機構(WAM)の利用条件

年金担保融資は年金を受給していることが第一の利用条件となりますが、これ以外にも条件が付されていて、年金さえ受給していれば誰でも融資が受けられるというものではありません。

ふたつの機関のうち、より広く知られている(独)福祉医療機構(WAM)の年金担保融資を例にとって、利用条件と融資金額についてご説明します。

まず最初の利用条件は年金を受給していることです。受給開始前である場合は融資は受けられません。このほか、融資を受けられないのは次のような場合です。

  • 平成26年12月1日以降に借入申込をした方で、任意繰上返済され、融資決定時の完済予定日に到達していない場合(26年12月1日以降に借り入れて、当初に設定していた完済予定日よりも早く繰上返済をした方の一部に当てはまる条件です。借入金を返済していたとしても、当初の完済予定日が来るまでは新規の申し込みはできません。)
  • 生活保護を受給している場合
  • 年金担保融資の利用中に生活保護を受給して、生活保護廃止後5年間が経過していない場合
  • 借りたお金の使い道がギャンブルなどであったり、公序良俗に反する場合、または借入申込者本人の利益に明らかに反する場合
  • 年金の支給が全額停止されている場合
  • 同じ年金で借入をしていて借入金残高がある場合
  • 現況届または定期報告書が未提出であったり提出が遅れている場合
  • 特別支給の老齢厚生年金を受給していて65歳時の年金決定手続き期間中である場合

特別支給の老齢厚生年金とは60歳から年金を受給できる制度です。

年金担保融資で借り入れたお金は、一定の制限はあるもののかなり自由に使うことができます。一定の制限とは「ギャンブルや公序良俗に反すること、借主の利益に明らかに反すること」であり、これら以外の使い方であれば、例えば生活必需品の購入や債務の一括返済に充てることもできます。

具体的な使途としては次のとおりです。

  • 保健・医療(通院、入院、手術にかかる費用など)
  • 介護・福祉(介護施設の利用料など)
  • 住宅改修(住宅のリフォーム費用など)
  • 教育(入学金や授業料など)
  • 冠婚葬祭(冠婚葬祭にかかる費用など)
  • 事業維持(会社の運転資金、事業用設備の購入費など)
  • 債務の一括整理(貸金業者からの借入に対する借り換えなど)
  • 生活必需品の購入(家電や家具の購入費など)

 
借入申込の際には、借入金をこれらの使途に使うことを確認する資料(見積書や請求書など)を提示することになります。なお、借入金をこれら以外に使いたい場合は(独)福祉医療機構(WAM)に事前に相談してみましょう。

年金担保融資の融資金額は、次の3つの条件をすべて満たす金額となります。

  1. 10万円から200万円まで(1万円単位で設定。生活必需品の購入の場合は80万円まで)
  2. 年金額の0.8倍以内(所得税額相当分を除く)
  3. 1回当たりの定額返済額の15倍以内(元金を2年6か月以内で返済できる額)

 
年金担保融資は毎月の年金からの天引きにより返済されます。返済額が多くなりすぎると生活費が不足してしまい、銀行や消費者金融などからの融資や生活保護が必要になる事態を避けるため、このような細かい条件が決められているのです。

一方、定期返済額は下限が1万円、上限は1回当たりの年金支給額の3分の1です。返済が開始されるのは融資開始日の翌々月以降の偶数月からとなり、定期返済額を差し引いた年金額が支給されるようになります。もし入院などで返済が厳しくなった場合は、定期返済額を減らしてやりくりすることができます
 

福祉医療機構(WAM)の申し込み方法

(独)福祉医療機構(WAM)での年金担保融資を申し込むときは、機構(WAM)に直接申し込むのではなく、年金の受取口座を開設している銀行などの金融機関で申し込みます。ただし、ゆうちょ銀行など利用できない金融機関があるので注意が必要です。

申し込みの流れは次のとおりです。

  • 金融機関で申込み
  • 審査(3〜4週間)
  • 融資決定(融資実行2〜3日前に電話連絡。融資できない場合は10日前くらい。)
  • 融資実行

 
申し込みから融資が実行されるまでは、おおむね1か月程度となっています。申し込みは毎月、上旬、中旬、下旬で締め切られます。仮に上旬に申込みをすると、融資が開始されるのはその月の下旬頃になるそうです。

また、申し込みに必要な書類は次のとおりです。

  • 申込書(金融機関に設置されています。)
  • 年金証書(年金担保融資を返済している期間中は金融機関が預かることになっています。)
  • 年金支給額がわかる書類(年金額改定通知書、年金振込通知書など)
  • 実印と印鑑登録証明書
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 資金使途の確認書類(購入するものやサービスのパンフレットやカタログ、見積書、請求書など)

 
年金担保融資を利用する場合は、借主が返済できなくなった場合に備えて連帯保証人をつけるか、信用保証制度を利用する必要があります。

連帯保証人の条件は

  1. 「3親等以内の親族であること」
  2. 「同じ都道府県に居住していること」
  3. 「70歳未満であること」

となっていて、これ以外にも審査基準が設定されています。

また、連帯保証人をつける場合には、上述の必要書類に加えて次の書類が必要になります。

  • 連帯保証人の実印と印鑑証明書
  • 連帯保証人の本人確認書類
  • 借主との続柄がわかる書類(住民票など)
  • 収入がわかる書類(所得税源泉徴収票、確定申告書など)

連帯保証人の審査基準は借主の状況によって異なりますが、あまりに収入が少ない場合などは連帯保証人になれない可能性が高いと考えられます。

一方、連帯保証人をつけることが難しい場合は、公益財団法人年金融資福祉サービス協会が提供する信用保証制度を利用します。この制度を利用するときは保証料を支払う必要があります。保証料は貸付金額や貸付利率、年間の返済額などによって決まります。

例えば、70万円を利率1.8%、1回の返済額5万円で借り入れ、保証料率が15円20銭(1万円に対して)とすると、保証料は1万6900円となります。保証料は融資が実行されたときに一括して差し引かれます。このため、借主が別途支払う必要がなく手間が省けますが、分割で支払うことができず、繰上返済をしたとしても保証料は返ってきません。

年金担保融資の申し込みは年金の受給口座を開設している金融機関で行います。ただし、どの金融機関でも申し込みできるわけではなく、「独立行政法人福祉医療機構代理店」の表示がある金融機関に限られます。このため、ゆうちょ銀行や農協(JA)、労働金庫では申し込みができないので注意が必要です。

もし、ゆうちょ銀行などに年金の受給口座を開設している場合は、口座を「独立行政法人福祉医療機構代理店」となっている金融機関に変更する必要があります。口座を変更するには、お近くの年金事務所などに「年金受給者受取機関変更届」(年金事務所などに取りに行くか、ウェブサイトからダウンロードすることもできます。)を提出します。
 

もし返済中に死んだらどうなる?

年金担保融資は消費者金融などと比べて金利が低いなど、年金を受給している方でも利用しやすい制度ではありますが、借主が高齢である場合も多いため、返済期間中に借主が死亡した場合は残りの返済はどうするのか気になるところです。

年金担保融資を申し込むときには連帯保証人をつけるか、信用保証制度を利用する必要があるとご説明しました。このときに連帯保証人をつけていれば、返済期間中に借主本人が亡くなった場合、残りの借入額は連帯保証人が代わりに返済することになります。また、信用保証制度を利用している場合、信用保証制度を利用するときには団体信用生命保険(団信)に加入することになります。
 

団体信用生命保険とは、住宅ローンなどでよく使われる仕組みですが、借主が死亡したときに保険金で借入金を返済することを目的とした生命保険です。

もし、借主が返済期間中に死亡した場合は、団体信用生命保険から保険金がおりることで年金担保融資で借り入れていた借入残高はなくなります。よって、相続人に返済の請求がいくようなこともありません。

 
また、年金担保融資の利用しやすい点として、他の借り入れがあっても利用できるというところです。年金担保融資の使い道のひとつとして「債務の一括整理」がありましたが、これは滞納している家賃や光熱水料、税金などの債務に限らず、銀行や消費者金融などの貸金業者からの借入に対する借り換えにも充てることができます。

つまり、銀行や消費者金融からの借り入れがあっても年金担保融資は利用できるということになります。

実際に(独)福祉医療機構(WAM)の調査では、年金担保融資を借り入れている者のうち4割近い人たちが、住宅ローンや銀行ローン、銀行や消費者金融のカードローンなどからの借り入れがあると回答しています。年金担保融資以外の借入金は50万円以下としている人が最も多い一方、500万円以上借り入れている人が14%ほどに上っています。

消費者金融などからの借り入れは金利が高く返済が厳しくなりがちですが、年金担保融資を利用して消費者金融からの借入金を一括返済していまい、あとは金利の低い年金担保融資を計画的に返済していくという方法もあります。

ただし、年金担保融資の融資金額の上限は200万円であり、実際に融資される金額は様々な条件によって決まっていくため、消費者金融からの借り入れがあまりに多額な場合は年金担保融資だけでは整理できないことも考えられます。

このように年金担保融資は、金利が低く、使途も広範囲にわたっているため、年金を受給している人でも安心して利用できる融資制度ですが、廃止が検討されているのです。

年金を担保とした貸付事業は、元々、一時的に発生した高額な医療費を賄うことを目的に設立された制度でした。しかし、平成12年から導入された介護保険制度や、高額療養費の現物支給制度などが整備された今、病院で高額な医療費を支払う必要がなくなってきています。

そして、年金担保融資が持つ元々の目的が失われた状況で、制度を存続させる必要があるのか疑問視され、廃止が指摘されているのです。また、年金担保融資の返済は年金からの天引きとなることから、借主の生活の維持に直結しています。返済期間中に使えるお金が少なくなって生活が苦しくなり、生活保護を受給せざるを得なくなる人が多いことも問題視されています。
 

まとめ

年金担保融資は、年金の受給権を担保にお金を借りられる制度です。公的な融資制度であることから、金利が低く、借入金も様々なものに利用できるため、年金を受給している方にとっては安心して利用できる制度です。特に貸付金利をみてみると、消費者金融のカードローンなどと比べれば10分の1ほどの低い金利で借り入れることができます

1回の返済だけで考えれば大きな差がないとしても、返済期間が長ければ長いほど1%の金利差が効いてくることになります。

また、使途についてもかなり自由に使えることになっています。他に消費者金融などから借り入れがある人でも利用できますし、消費者金融からの借り入れを一括返済して債務整理をしてしまいたいときも利用できると考えられます。

消費者金融から借り入れている場合は高い金利が設定されていることが多く、多額の利息を支払う必要があります。しかし、金利が低い年金担保融資に切り替えることができれば、将来的に支払う利息を抑えることができ、計画的に返済していくことができます。消費者金融からの借り入れで返済に困っている場合には、活用を検討したい制度です。

ただし、いくら使い道がかなり自由であるとはいえ、ギャンブルや公序良俗に反することなどに使おうとする場合には借り入れることはできません

年金担保融資を申し込む際には、購入する品物の見積書や請求書などで借入金を何に使うのか確認されます。決められた範囲内での使い方でない場合には相談することで認められるケースもあります。しかし、リスクが高いギャンブルのような投資商品であったり、犯罪や環境に悪影響を及ぼすような事業に充てようとする場合は年金担保融資は利用できません。

なお、年金担保融資のデメリットとしては、返済が月々支給される年金から天引きされるため、使えるお金が少なくなることで生活費に直接ダメージを与える点です。生活できない状態にならないように、申し込みの時点で借り入れる金額を細かい条件の下で設定していくのですが、それでも返済期間中に生活が苦しくなって生活保護や消費者金融からの借り入れをする人が多くみられます。

また、ゆうちょ銀行やJAでは取り扱いができないこともデメリットといえます。年金担保融資は「独立行政法人福祉医療機構代理店」となっている金融機関でないと取り扱うことができないためです。もし、ゆうちょ銀行やJAに年金の受給口座を開設している人は、他の金融機関に口座を移す手続きが必要になります。

そして、もうひとつのデメリットとして、申し込みから融資が実行されるまで時間がかかるということです。金融機関に申し込みをしてから審査が終わって融資額が口座に振り込まれるまでは、おおむね3週間から4週間程度かかります。

もし、ゆうちょ銀行などから他の金融機関に口座を変更しようとすれば、1か月程度は余計にかかってしまいます。つまり、申し込みをしてから融資を受けるまで最長で2か月かかる場合があるのです。

どうしてもすぐにお金が必要な場合は、年金生活者でも利用できるカードローンがあるので検討してみましょう。

消費者金融のレイクなら70歳以下の年金受給者でも借りられますし、初めての利用なら30日間利息なしで借りることもできます。早いうちに返済ができるようであれば、このような消費者金融のカードローンを上手に活用することもできます。